小さなキミと





ジィーっと食い入る様に見つめてくる葉山くんに、南雲くんは怖気(おじけ)づいたようだ。


ヘラヘラしながら南雲くんは、自分よりもだいぶ背の低い葉山くん相手に、ペラペラと何かを喋り続ける。


最後にアハハ~と格好悪く笑って、彼はすぐさま逃げた。


「なっさけない。何なのアイツ」


あたしは思わず、両替機の脇で独り言を漏らした。


やっぱり筋肉だけあっても駄目だね。

もっと頼りがいのある男じゃないと。


あたしの理想のタイプの条件が、こうしてまた一つ増えた。


それはそうと、葉山くんが派手に登場したせいで、2人はかなり目立っていた。

遠巻きにひそひそ喋る女子高生たちに今更気づいたのか、葉山くんがキョロキョロと辺りを見回す仕草をする。


そしてパッと結の手を取って、彼は走った。


あたしは慌てて両替機の脇から飛び出して、両サイドがユーフォーキャッチャーに挟まれた道を去っていく、2人の後ろ姿を目におさめる。


ヤキモチ……だよね、葉山くん?

結が見知らぬ男と2人でいたから、不安になっちゃったんでしょ?


あたしバカだけど、今のは見ていてすぐ分かった。

ただ、それが恋なのかどうかは微妙なところだけど。


葉山くんって、いつも余裕があって爽やかすぎて、本音がよく分からないんだよね。


だからこそ、今の葉山くんの様子には驚いた。


そもそも、なんで葉山くんがここに居たんだろう。


偶然にしても、1人でゲーセンに入るようなタイプには見えないし。


そんなことを考えながら、あたしは近くに居た高校生カップルにジト目を向けたのだった。

< 71 / 276 >

この作品をシェア

pagetop