小さなキミと
「ねぇ、いいじゃん撮ろーよぉ」


「この子マジかわいいっ」


なんだろう。

急にあたしの背後が騒がしくなった。



「1枚だけでいいからさぁ、一緒に写ってくれない?」


「この子照れてる~」


きゃあきゃあと騒ぐ、女子たちの黄色い声が耳に響く。


かわいい?


どこぞの美少女でも現れたのかと思って後ろを振り返り、思わず絶句した。


派手な女子高生のグループが取り囲むのは、明らかに乗り気ではない1人の小柄な男子高生。

4,5人の女たちに迫られ、彼は逃げようにも逃げ道がない。


それでも彼は、プリ機からは一定の距離を保っていて、そこに強い意地を感じた。


……うそ。服部だ。


あたしは一目でそれが服部奏也だと分かった。


逆ナンというには少々強引すぎる。

服部は、顔色が真っ青になっていて今にも吐きそうだった。


服部、本当に女が苦手なんだ……


思い通りにならない服部に、彼女たちはだんだんと苛立ってきた様子。


「いい加減、諦めたらぁ?」


「往生際悪すぎっ。こっちが金出すっつってんじゃんよー」


なっ、なんて自分勝手な!


たまらなくなったあたしは意を決し、深く深呼吸をした。


日頃の生意気な態度とかムカつく言動とか、今だけは忘れてあげよう。


服部、お姉ちゃんが助けてやるからね!

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