小さなキミと
「あーッ、奏(そう)ちゃんここに居たんだ!」


無駄に大きな声でそう叫び、服部のもとへ駆け寄った。


あたしを見て眉をひそめた女子高生たちの間に割って入り、服部を彼女たちから引き離す。


突然のあたしの登場に驚いたのか、

あたしを見上げ、ポカンと口を開けて目をパチクリさせる服部。


「もうッ、ダメでしょ、勝手に居なくなっちゃ」


そんな服部を適当な理由で叱(しか)りつけ、すかさず今度は女子高生たちに向き直る。


「弟はこれから塾があるので失礼しますッ」


あたしはペコッと頭を下げ、勝手に弟にした服部の手を掴んで外へ向かって走った


ゲーセンを飛び出し、あたしはぐんぐん加速した。


初夏の風が気持ち良くって、服部と繋がった左手があったかくて、なんだかすごくワクワクする。


自分でもよく分かんない高揚感が、ぶわーっと心の中を満たしていく。




────あたしが連れ出してあげるから。


────あたしが守ってあげるから。




歩道を歩く人々を、次から次へとと追い越して行く。


チラリと後ろを見てみると、服部は呆れたように笑っていた。


あたしもニッと歯を見せて、服部の手を引いてひたすら走った。

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