小さなキミと
「あれから進展はないの?」


「……なにが」


オレは圭から目を逸らしてしゃがみ、

手にしたL字の鉄パイプを、地面に置かれている基盤にグイと押し込んだ。


「だからぁ、剛さんと」


「圭はどうなの、鳴海さんとどこまでいったワケ?」


素早く圭の言葉を遮って、オレは話を切り替える。

オレの話はやめてくれ。


「どこまで、ってお前……
んなもん、たった2週間でどこまでもクソもあるかっ」


みるみる顔を真っ赤にさせた圭が、喚(わめ)くように言った。



2週間前、圭はオレをゲーセンに置き去りにして、鳴海さんの手を引いてどこかへ消えた。


後から聞いた話では、そのゲーセンのすぐ近くの路地裏で圭が告って、2人は付き合うことになったそうだ。


別に、圭と鳴海さんがどうなろうと、どーでもいいんだけどさ。


「オレは奏也と剛さんが手繋いで走って行くのを見たぞ」


クソッ、話が戻された。


「だからー、剛とはそういうんじゃなくて、って何回も言わせんじゃねーよ」


事情は説明済みだというのに、最近の圭は、この話題を蒸し返すのが好きだ。


「でもさーお前、押し倒したんだろ?」


「ハァッ!?」


思わず大きな声が出てしまい、周りでテント張りの準備をする生徒に、何事かとジロジロ見られてしまった。


押し倒した!?

誰が……オレが?


もしかしてコイツ、駐車場のアレのことを言ってんのか?


「なにそれ剛に聞いたの? アイツ……バカじゃねーの?」


声のトーンを落とし、オレは作業に集中する。


ドキドキと心臓の音が早くなって、動揺しているのが自分で分かった。

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