きっと、明日も君がすき。
目が合った佐田くんは、無表情で私を見ていて。
言うな、と訴えてるんだろうなと分かった。
「私もすぐ部室に行っちゃって、部活のお別れ会が終わった後は他の部活みんな帰っちゃってたからなぁ…」
「志桜里ちゃんは無かったの?告白!」
まさか私にまで聞いてくると思っていなかった質問に、慌てて首を振る。
「ないないっ!」
「しっ、」
思わず声が大きくなってしまった私に今度は垣添さんから怒られてしまった。
教員席の先生たちの数人がこちらを見ていて、思わず姿勢を正し直す。
あ。
田島先生もこちらを見ていた。
やばかったかな…と思っていると。
先生の口が弧を描き。
………。
人差し指を口に当て、いわゆる、しー、のポーズをされた。
こくり、と頷けば、先生は卒業生の方へ視線を戻す。
…先生にまで注意されてしまった…。
横でなんだーとつまらなそうな声がしこえてくるけれど、お話はこれでおしまい。
……言っちゃえばいいのに。
どうして隠すのかな。というか、私が言えば良かったのかな。
…卒業式の日、佐田くんのモテっぷりはびっくりするほどだった。
別れてからは元々接点なんでなかったから会うこともなく。
付き合った時は1日1日があっという間に感じていたけれど、心にぽっかりと穴が空いて、思い出しそうになる度に泣きそうになるのを堪えながらの毎日は本当に長く感じた。
構内ですれ違うことすらなくて、本当に付き合ってたのかな、付き合ったことですら私の夢だったんじゃないかなって思うくらいに佐田くんは遠い存在になってしまって。
自分から手放したくせに、季節が巡るごとに佐田くんとこうしたかった、ああしたかった、この景色を一緒に見たかった。
そんな願望ばかりが未練がましく溢れてきて、また苦しくなる。
そんな中、卒業式の練習でやっと、遠目だけれど佐田くんの姿が見れた。
立ち上がって座る。
たった一瞬だけど姿を見れるこの瞬間がとても愛しくて。
でも、それも卒業式である今日が最後。
裏返ってしまわないか心配していた返事も無事に終わって、私は最後であろう結真くんのたった一言を聞くべく進んでいく式を眺めていた。
「佐田 結真」
「はい」
先生に名前を読み上げられ、凛とした声が体育館内に響いて、私の耳に伝わってくる。
見れば、立ち上がった結真くんの姿が見れて。
あれから少し背が伸びたかな、髪の毛も短くなってるよね、なんてあの頃と比べて気付く自分が嫌になる。