きっと、明日も君がすき。
佐田くんを好きだと言う事実はまだ消すのに時間がかかるだろうけど、いつか、振り返った時にあの時私はこの人が好きだったんだ、この人といるだけで幸せだったんだって思えるように、と思っていた。
最後だから、佐田くんの姿を見れるのもきっともう最後だから目に焼き付けとこう。
忘れないようにしっかりと、と式中できる限り自分の目に焼き付けた。
友達がいて楽しかった3年間だけど、佐田くんと関われていた僅かな時間があったからこそもっともっと幸せだと感じることができた高校生活だったんだと思う。
そう思うと涙が自然と出てきて。
体育館から退場する時はうるっときてしまったけれど、必死に我慢した。
教室に戻って、一人ずつ卒業証書をもらい、担任の先生の挨拶。あちこちで拍手の音が聞こえて解散する音も聞こえてくる。
自分達のクラスが解散になった時は、もう廊下はごったがえしていた。
保護者、在校生、卒業生で溢れかえっていて。
「志桜里センパイ!」
「あ!」
「こっちです!」
不意に制服を引っ張られて誘導された端っこの廊下。
「卒業おめでとうございます!」
笑顔で、花束を差し出された。
「うわぁ!ありがとう!!」
小さなブーケになっていて、顔を近づけるといい匂いがする。
「大学に行っても頑張ってください」
「こっちに戻ってきたら部活にも顔だしてくださいね」
「大学のこといろいろ聞きたいんで暇な時は連絡ください」
「うん、ありがとう」
対したこともしてあげられない先輩だったのに、嬉しい言葉を貰って幸せだ。
「みんなも元気でね。コンクール頑張って」
少し別れの話をしていたら、いつの間にかあれだけ溢れかえっていた廊下はしん、と静まり返っていた。
「あ…私達は片付けがあるので」
「うん。ありがとね」
手を振って別れて、歩き出す。