きっと、明日も君がすき。
ぽんぽんと再び撫でられる頭。
「…すみません」
もう一杯紅茶を淹れてもらい、冷やしたタオルで目を冷やし落ち着いたところで、やっと先生と顔を合わすことができた。
「うん」
カップを流し台へと運ぶ先生を見ながら、自分も立ち上がる。
「そろそろ帰ります」
最後の最後に情けないところを見せてしまったな。
ずっと慰めてくれて、ありがたい。
少し恥ずかしさもありながら、椅子を片付ければ。
「矢野さん」
ん、と笑顔の先生が両手を広げた。
え?
「さよならのハグ。今日はハグしても許されるんだって。矢野さんがセクハラを訴えなければだけどね」
冗談っぽく言う先生に笑ってしまう。
「おいで、」
ん、ともう一度手を伸ばす先生。
「それとも僕から行った方がいい?」
そう聞かれ、答えるよりも先に先生の腕の中に飛び込んだ。
顧問の先生が、田島先生で良かった。
「…まぁ、これでさよならじゃないからね」
え?
ぎゅーっと抱きしめられるのに少し気恥ずかしさを感じていれば、頭の上で先生が呟いた。
「教職。とってくれて教育実習で会えるの楽しみにしてる」
その言葉に、私は頷くしかできなくて。
強くなりたい。また、ここへ戻って来た時には今よりもずっとずっと強くなって、佐田君のことを忘れて前に歩き出せているといいな。
そう思った。
……先生の優しい笑顔の下で思いっきり、高校時代の佐田君とのことを過去にしようと泣いた私はすっきり笑顔で校門を出た。
……卒業式後のクラスでの打ち上げで耳にした話では、佐田君はボタンがぜんぶなかったらしい。