きっと、明日も君がすき。
卒業式の日に決めた通り、私は前へ進もうと必死だった。
佐田くんがどこに進学したかも知らない。
友達に聞けば簡単に知ることができるのだけれど、あえて聞かないことにした。
地元の大学に残っているのか、県外に行ったのか。
それさえも分からない、その状態が一番いいと思った。
きっと、知ってしまえば。
地元に残っているならば、私が地元へ帰るたびに何処かで会えるのではないかと思ってしまうだろうし、県外にいるならば、もう地元へはいない寂しさを感じてしまうかもしれないから。
忘れるなら、0にしたかった。
県外の美大に入って、長期休みは帰ってくることがあったけれど、会うことはなかった。
美大に通っている間は新しい友達や大学生活のことでいっぱいいっぱいで忘れられていたのに、地元へ戻るとどうしても思い出してしまう。
それが辛くて、でも、時間が経てば不思議と無理して忘れようとしなくてもいいんじゃないか。
そう思えるようになった。
この苦しい気持ちも、あのころの必死だった自分も、忘れず思い出として美化されて残って行くのだろうと。
ハタチを迎えてそう思えるようになってから、歳を越してすぐ。
成人式で、地元へと帰った。
成人式は、区ごとに指定された場所に固まる。彼も、私も同じ区内だから、大勢の人の中でももしかしたら会えるかもしれない。
ううん、会えるかもしれないは偶然という意味ではなく、会いたいという意味にいつの間にか変わっていて。
あの頃からできる限り努力した。外見も、心も。強くなりたかった。
今会えば、彼は何て言ってくれるだろう。私だと、分かってくれるだろうか。
逆に私も知りたいのかもしれない。
同じくらいの空白の時間を過ごした彼が、あの頃からどれだけ変わっているのか。
変わった彼を見て、あの頃とは違うね。
そう思って諦めるきっかけが欲しかったのかもしれない。
そんなことばかり考えてしまっている時点で、私は結局、何も忘れられてないんだ。
そう思うとまた胸がずきりと、
古傷が開いたようにじわりと、苦しみが湧き上がってきた。
けれど。