きっと、明日も君がすき。

前で動く佐田君の後ろ姿と、あの頃いつも追いかけていた制服姿の佐田君がかさなる。


「…ちょっと」


「え?」


「終わり。戻るよ」


「あ、ごめん」


気がつけば不審そうな顔をする佐田君に、焦って背を向ける。


私で通路を塞いしまっていて、出口を目指す。


……と。


「あ、」

「わ、…志桜里ちゃん……と佐田せんせ…」


慌てて飛び込んできた女の子とぶつかりそうになる。


思わず後ろに後ずさった私は、佐田君の後ろに下がるのを止められた手にぶつかった。

目を見開いて私達を見る子は…



授業で見たことのある子だ。


名前は確か…、


「大島どうした」


後ろから聞こえた佐田君の声。そうだ。大島さん。


「どうしたの?」


慌てた表情だった大島さんに声をかけるけれど、ハッと大島さんは眉を下げる。



「何でもないです。ちょっと…」


言葉を濁して視線をそらす。早く立ち去ってくれ、と言っているような目で。どうしたのだろうと思う。

「なんでもないならこの教室はもう施錠する」


鍵を見せる佐田君。それを見て泣きそうな表情になる大島さん。


「あの…、鍵は私がちゃんと締めて返します。だから…ちょっと待ってもらえませんか」


「それはできない。施錠管理任されたのは俺達だから。まだHRが残ってるだろ?自分の教室に戻りなさい」



「……、」


バッサリと佐田君に言われ、俯く大島さん。

「…分かりました」



「待って、!」


出て行こうとする大島さんの腕を掴む。


弾かれたように振り返って私を見た大島さんは、びっくりしたように目を見開いていて。

でも、その人見に貯めた涙は今にもこぼれ落ちてしまいそうで。

「…何か理由があるんでしょう?…言いたくないかもしれないけれど、誰にも言わないし力になるから、教えてくれないかな?」


ね、言ったと同時に、瞬きした大島さんの瞳から涙がこぼれて、それを拭ってあげる。

ポロポロとこぼれる涙に、大丈夫だよと頭を撫でる。


「藤波先輩に明日、渡そうと思っていたミサンガをなくしたんです」





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