きっと、明日も君がすき。







先生へは、あの日のお礼を今更ながら。

お菓子とコーヒーのプレゼントにした。

中身を見て、先生は満面の笑みを浮かべてくれて。


「また会える日を楽しみにしてるよ。またいつでも遊びにおいで」

「はい」

「あ、そうだ。卒業式の時みたいに、ハグする?」

少し寂しくて、泣きそうになる私を見て、はっと無邪気に思いついたように笑って、先生は手を広げる。

「しません!」

「泣かないの?」

「泣きません」

ちぇ、と少し残念そうに広げていた手を下ろすから、泣きそうになっていたのも吹き飛んでしまった。



「あ。…ねぇ、佐田くんには挨拶した?」

拗ねた顔を一瞬したかと思えば、すぐにまた思いついたように目が大きくなって問われる。

「あ。打ち上げがあるので…」

同い年組では、このあと打ち上げがある予定だ。実習お疲れ様、って。

さっき山根くんに言われていたから、きっと来るだろう。


「…言いたいこと、言えそう?」

「え?」

「別れた理由も嫌がらせのことも」

「…」

「あの時の君は、無理だったかもしれないけど、今なら言えるでしょ?」


あの時、素直に言えなくて、我慢して。逃げて。諦めたこと。

今なら、言えるのだろうか。

言ってもいいのだろうか。昔のことを今遡って伝えて、迷惑にはならないのだろうか。

「…まだ好きなんだから。すっきり前にすすめばいい。ここであったことは、ここで終わらせた方がいいでしょ?」

「好きって、」

「あの頃も、今も。佐田くんを見るときの矢野さん、絵に描きたいくらいいい顔してるよ」

「……、」

「…いい機会だから。打ち上げで、なんて言わないでここでゆっくりちゃんと話してみたらどうかな。まだきっとどこかにいるかなー…」




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