きっと、明日も君がすき。
あの、結真くんの話をするときの女の子達の顔が、目が忘れられない。
思わず笑ってしまった私に、結真くんは、は?というような顔で私をみる。
かちあう視線。
すうっと息を吸ってから、結真くんへと届ける。
「佐田くんの高校時代、すごく聞きたがってる。毎回、授業で聞かれます」
どの授業でも。二時間続きの週1の授業で、実習中に受け持つのは二回だけになる。
それなのに、最初の一時間では遠慮してる子達も、一時間が終わる頃には遠慮なく質問をぶつけてきて、二時間目に入ればもう打ち解けてくれる。
「授業も、すっごく分かりやすいし、学年末頑張るって言ってました」
私も、高校生の時に結真くんが先生だったなぁと思った。
きっと、頑張ったんだろうなって。
数学は苦手だったけれど、結真くんが担当なら、きっと。頑張ろうと思えるだろうなって。
「……何で高校時代なんか気にするんだろう。大して良いこと何て無かったのに」
ぼそっと。
教科書を広げながら言った結真くんの言葉は、私に向けてなのか。
ただ疑問に思ったことをこぼしただけなのか。
[大して良いこと何て無かったのに]
それは、何についてのことなのだろう。結真くんにとっての高校生活は毎日は当たり前で、退屈だったのかな。
「……そうですか?私は、楽しかったですけど」
学校生活は毎日同じような授業を受けて、大して良いこと何て無かったけれど。
それ以外では友達と毎日会って、尽きない話をして、とても楽しかった。
付きまとうような形だったけれど。
結真くんといれるだけで、私は、毎日幸せだった。
今でも、その時の毎日幸せだったという気持ちは、残ってる。
苦しくなることもあるけれど。
幸せな気持ちもちゃんと蘇ってきてくれる。
「……だろうな」
少し、あった間。ぎしっとパイプ椅子が、結真くんが後ろに体重をかけたと同時に音を鳴らした。