黒と白
ふんわりとした意識のまま雑居ビルを後にすると、ふわりと柔らかい夕暮れのオレンジが街を包んでいく。



もうすぐ
夜がやってくる。


指定されたデパートの入り口の椅子に座っていると「ついたよ」と連絡が入る。


見慣れた真っ黒のワゴンタイプの外車。左ハンドルは乗りにくい。後ろから車が来ていない事を確認して、ゆっくりと助手席へ乗り込む。



「ごめんなぁ、遅くなって」


わたしが言うと
彼はニコリと微笑み

犬みたいに人なつっこい笑顔を見せた。


「大丈夫やで。
ほれ、タバコ」


「わたしのも買っといてくれたん?
ありがとうな」


「それと、はい」


まだ僅かに温かいミルクティーを差し出した横で、彼は片手でハンドルを切りながらブラックコーヒーを手にしていた。



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