黒と白
「起きたん?」

重たい腰をあげようとすると
世界がぐるりと回った。

彼は細い腕を即座に回し、わたしの脇腹あたりを支えるように抱きとめた。


「15時間も眠ってたんやで」


「ほんま?」

朦朧とする意識の中で、深い紺色の光を遮断するカーテンを見つめた。

隙間から僅かにもれる光を見つめ、すぐに顔を上げた。



「寝たん?」


「寝たで」


彼は柔らかく笑う。

その顔が大嫌いだった。


「ごめんな?」

わたしが言うと、彼は何も言わずに首を傾げ、また大嫌いな笑顔を作る。


笑わなくていいのに。


わたしが腕を伸ばすと、彼はさも当然のようにわたしの体を持ち上げて、ひとりでは歩けないわたしをリビングのソファーまで連れて行った。



「薬飲んだん?」

「おぉ」

「調子は?」

「お前よりはええやろ」



寝室もリビングも昼夜とわずにカーテンは閉められている。
だからいまが何時かなんてわからない。


リビングに座る彼の膝に自然と頭を乗せると、彼はストレートロングのわたしの髪に指を自然にすりこませる。


「まだ寝るん?」


柔らかい彼の声が響いていたけれど
わたしはまた瞼を閉じた。


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