黒と白
1ヶ月目

1

20歳の春。

わたしは世界のすべてを軽蔑してた。



「杏樹ちゃん帰ってたん?」


家に戻り
螺旋のような階段を大きな足音を立ててのぼっていくと、綺麗に整理整頓された部屋がある。

全体的に白でまとめられたその部屋は物が殆どなく、殺風景に映る。

わたしの部屋なのにわたしの部屋ではないように映るその場所に、時たま帰ってくるのには理由がある。



ドアの向こうから高いトーンでわたしの名を呼ぶ女が、ギィッと鈍い音を立ててドアノブを回す気配を感じたので、すかさずに大声を出す。


「部屋に入いらんどいて!」


綺麗に整えられた白いシーツを乱暴にはぎとると、洗いたての良い匂いがふわりと部屋全体に舞っていった。





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