黒と白
ゆっくりとドアを開けると
目の前には眉毛を下げて、困ったような顔をした若い女がひとり。
わたしはその女を一瞥して
手のひらをさしだした。
「あぁ。そうやね。
岸本さぁ〜ん」
女は思い出したように甘ったるい声を出して、お手伝いの岸本さんを呼ぶ。
岸本さんはブランド物の紙バックを手にとって、曲がった腰をさすりながらゆっくりと螺旋階段を上がってくる。
その間
女はいやらしい笑みを浮かべて
精一杯わたしに作り笑顔を見せた。
「たまには帰ってこんと、お父さんが心配しているんよ」
紙バックをわたしに渡しながらそう言う女の手には見た事のない腕時計がはめられていた。
ダイヤモンドがキラキラと光っている。
「わたしが家におると、あんた目障りやろ」
「杏樹ちゃん!そんなことあらへんで!わたしもお父さんもいつも杏樹ちゃんを待ってんで」
「よう口から出まかせがペラペラ出るわ。あんたなんか大嫌いなんやからどいてよ!」
「杏樹ちゃ…!」
女の顔はもう見なかった。
岸本さんが心配そうに見つめていたので、胸がチクリと痛む。
「岸本さん、またな」
「えぇ、杏樹さま。いつでもお帰りになってください。」
柔らかい岸本さんの声の中
螺旋階段を急ぎ足でおりていった。
目の前には眉毛を下げて、困ったような顔をした若い女がひとり。
わたしはその女を一瞥して
手のひらをさしだした。
「あぁ。そうやね。
岸本さぁ〜ん」
女は思い出したように甘ったるい声を出して、お手伝いの岸本さんを呼ぶ。
岸本さんはブランド物の紙バックを手にとって、曲がった腰をさすりながらゆっくりと螺旋階段を上がってくる。
その間
女はいやらしい笑みを浮かべて
精一杯わたしに作り笑顔を見せた。
「たまには帰ってこんと、お父さんが心配しているんよ」
紙バックをわたしに渡しながらそう言う女の手には見た事のない腕時計がはめられていた。
ダイヤモンドがキラキラと光っている。
「わたしが家におると、あんた目障りやろ」
「杏樹ちゃん!そんなことあらへんで!わたしもお父さんもいつも杏樹ちゃんを待ってんで」
「よう口から出まかせがペラペラ出るわ。あんたなんか大嫌いなんやからどいてよ!」
「杏樹ちゃ…!」
女の顔はもう見なかった。
岸本さんが心配そうに見つめていたので、胸がチクリと痛む。
「岸本さん、またな」
「えぇ、杏樹さま。いつでもお帰りになってください。」
柔らかい岸本さんの声の中
螺旋階段を急ぎ足でおりていった。