黒と白
「杏樹!」


玄関の前でパンプスに足を通そうとした瞬間にまた呼び止められる。


本当に今日はツイていない日だと思う。



「なんでおるん?
平日の日中からお家におるなんて
大ちゃんもよっぽど暇やな」


「仕事の資料を取りに来ただけやで。
それより最近お前なにしとん?
また金せびりにきたんか?大学いっとらんのか?」


質問責めは大ちゃんの癖だ。
わたしとは全く似ていない、一重の目がつりあがる。それでも7つ歳の離れた大ちゃんは正真正銘わたしと血の繋がった兄妹である。


「大ちゃんには関係ないわ」

「関係ないことないやろ。
家にきたなら美雨や莉央に会っていき」

「いやや。」



リビング辺りだろうからか。
赤ん坊の泣き声がした。

それを無視するようにパンプスに足を通し、重たいとびらを開ける。


大ちゃんの言葉は最後まで無視した。

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