黒と白
「立石さんですね。
少々お待ちください」


貼り付けられた笑顔をした受付のお姉さんが、わたしのカルテに目を通し忙しなく動いている。



ぼんやりと薄いグリーンのソファーに腰をかけ、ゆったりとした音楽の流れる室内を見回す。


そこにいる誰もが笑っていなかった。


ここは精神科だ。
しかも胡散臭い。
それでも毎日この病院に人が後を絶たないのは、診察を通さなくても薬を処方してもらえるというところの利点がある。


数十分後いつも通りの処方が出て、お金を払い階下にある薬局に行き、大量の薬が無造作に袋に詰め込まれ、手渡された。


ビルの廊下にあるトイレに入り、わたしは一錠薬を噛み砕いて飲み込んだ。


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