絶対やせて貰います。
懲りずに近付いて来る遼君を警戒して弁当を遠ざける私。
「エビフライは許してあげますが、私は安西先生ではありません
アゴ肉を『タプタプ』するのはご遠慮ください」そこはきっぱりと宣言する。
「うそ。どすこい……スラムダンク知ってんの?」ニコニコと嬉しそうな表情を見せる遼君。
「はい……いつも同級生が『タプタプ』言いながらアゴに触ってくると家族に話しました
そうしたら弟がマンガを貸してくれたので……」にっこりと笑ってそう返事をした。
20年以上も前に描かれた漫画なのに全然古臭さを感じさせないどころか、
女の私が読んでも最高に面白い少年漫画は……『男のバイブル』らしい。
漫画の中に出て来るバスケット部の監督は最高の指導者であり素敵な紳士
安西先生は某フライドチキン専門店のおじさんに似てなくもない。
私はあの容姿と同等の扱いをされたのか?
そう思うとなけなしの乙女心がじくじくと痛んだのも事実。
でもその時の気持ちは誰にも話していないし、これからも話すつもりはない。
遼君との会話で、あの時の何とも表現し難い思いに一人浸っていたら……