絶対やせて貰います。
二十代後半?
または三十代前半位だろうか?
ふっくらとした体で優しい雰囲気の女性は旭君のお父さんと一体どんな関係なんだろう?
この歳になるまで妊婦さんを近くでマジマジと見る事がなかったから彼女が妊娠何か月なのか?
私にはさっぱり見当も付かない。
「ありがとうございます……座ってなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。まだ産まないから心配しないで……」
茶目っ気を見せる彼女は明るい人なのだろう。
この重苦しい雰囲気をどうにかしようと努めて明るく話してくれているように感じた。
「取り敢えず自己紹介だけはしておくか……」
この場を仕切っているご主人がお先にどうぞとばかりに私を見ているから、
手にしたばかりの湯飲みを慌てて茶卓に戻した。
「先程……旭君のお父さんが言っていた様に、
小岩井旭君の高校の同級生で錦野鯉子と申します。
私がこの場に居て良いのか分かりませんが訳アリで……
今、小岩家の皆さんのダイエット指南役をさせて貰ってます」
「「「えっーーー」」」
自己紹介をした私の言葉に三人が驚きに声を上げ困惑した表情を見せる。
三人は視線だけで会話でもしているみたい……
私……何か変な事でも言ったかな?
三人の声に動揺して体がビクンとなり手が震える。
口が渇いていたけど湯飲みを間違って落とすといけないから
『仕方ないか』お茶を飲むのを諦めたところに……
扉が開く音に続いて「お邪魔します」旭君の声が聞こえてきた
それから直ぐにその姿が現れたら皆の視線が一斉に彼へと注がれている。
たぶんお父さんに対する怒りを滾らせたまま急いでやって来たのだろう……
旭君の顔はとても険しくて『怒った顔を見るのは初めてかも』そんな思いで彼を見つめる。
今まで旭君がどれ程もどかしく、やりきれない思いを抱えていたのか私は知っている
だからこそ思いの丈を素直にお父さんにぶつけて本音で話し合って欲しいそう思った。