絶対やせて貰います。

緊迫したこの状況下で一番に口を開いたのはお店のご主人。

「旭君、久しぶりだね……

そうは言っても会ったのは君がまだ赤ん坊の頃だから覚えてないよね?」

ニコニコと笑顔で話しをするご主人は強心臓の持ち主に違いない。

「私は君のお父さんの幼馴染で和田文雄(わだふみお)

こっちの可愛い女性は妻の琴音さん」琴音さんは旭君に向かって微笑み会釈した。

「それから……あと二月もしたらもう一人家族を紹介できるよ」

和田さんは琴音さんのお腹を愛おしそうに撫でながらそう言った。

『彼女は和田さんの奥さんだったのか……あぁ良かったー』ホッと胸を撫で下ろす。

彼女とお父さんの関係がハッキリして浮気疑惑が晴れたからか……

ハッした表情の後で旭君も「小岩井秋緒の息子の旭です」自ら名乗り頭を下げた。

小岩井父の不審な行動は依然として謎のままだったけど、皆で和田さんの話しを聞く事になった。

和田さんは元商社マン。

長期にわたる海外駐在のため日本を離れ暮らして居たそうだ。

そんな時に恋しくなるのが日本食だったと話す

でもどの国にも日本料理店はあっても”本物の日本料理”では無かったらしい。

値段ばかり高く、味は現地の人に受け入れ易い味に改良させているから日本人はガッカリするんだとか

そこで本物の日本食が食べたければ自分で作るしかないと元々料理好きだった事もあり、趣味から入った料理の世界に魅力を感じ仕事にしようと決意したのが料理人になる切っ掛けだったと話してくれた。

30歳の時に思い切って会社を辞めて学校に行き調理師免許を取得するのだが、その学校で知り合ったのが高校を卒業したばかりの琴音さんだった。

和田さんの言い分だと琴音さんに”惚れられた”そうだ。

でも琴音さんが一回りも年が離れていた事もあり当時は恋愛対象外だったなと笑っていた。


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