絶対やせて貰います。
「旭は幼かったけど、おぼろげでも覚えてないか?
マリアさんが太る切っ掛けになった事件を……」
小岩井父は言葉にするのも辛いのか?
陰りを帯びた表情で旭君に問いかける。
「あっ……」
声を出した旭君は何かを思い出したかのように……
「うん……」頷き短く返事を返した。
「それなら、マリアさんに
『ダイエットを始めるから君の手料理を食べる事が出来なくなった』って
どうしても言えなかった私の気持ちを理解してはくれないだろうか?」
小岩井家で写真を見せて貰った時に私も疑問に思ったから良く覚えている。
ある年を境にマリアさんがとても太っていて
『何か理由があるのかな?』って疑問に思ったからだ……
私が”一緒にダイエット始めませんか?”と誘った時に
即答して貰えなかったのも、その事件が関係しているんだと漸く理解した。
「旭は優しい子だから私の分までマリアさんの料理を食べてくれたんだろう?」
「・・・」
「私の代わりに太っていく息子を見るのは本当に心苦しくて……
面と向かって会話も出来なかった、不甲斐ない父親ですまない」
やり方は間違っていたかも知れないけど、家族を思いやる気持ちは本物だもの
優しくて良いお父さんだね、旭君。
「だから錦野さんの言葉がにわかには信じられなくて驚いてしまったんだ……
旭だけじゃなくて”マリアさん”も一緒にダイエットしてるんだってな
家族とちゃんと向き合っていたら、少なくても数週間は無駄にする事は無かったのに……」
小岩井父からは後悔している様子がまざまざと窺い知ることが出来た。