絶対やせて貰います。
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大神夫妻と初めて会ったあの日
駐車場までの短い距離を手を繋いでゆっくりと歩いた後に旭君とドライブに出かけた。
普段とは違う場所に車を走らせ、いつもと違う状況下で話をしただけのこと。
そんな些細な事柄に私は何を期待していたのだろう。
「こいちゃん。もう失恋から立ち直れた?」
「へぇ?」
旭君から掛けられた言葉が意外だった事もあってか、
間抜けな声を発した私は立ち直るも何も旭君に聞かれるまで元カレ
『高橋悠斗』の存在を完全に忘れておりました。
「あぁ…うん。お蔭様で旭君に聞かれるまで完全にその存在を忘れてました」
バカ正直に薄情な発言をする私の事を旭君は呆れたんじゃないかと思う。
「ご…ごめん。折角忘れてたのに、余計なこと言っちゃって……」
『やっちゃたー』
そんな表情で気まずそうに頬を人さし指で“ポリポリ“と引っ掻きながら苦笑する旭君。
確か再会した日に飛鳥ちゃんがポロっと私が失恋したばかりだと何度か口にしていた筈だ。
それにひかるちゃんとマリアさんには同姓の気安さから失恋した事も話しているし、
二人のどちらかに話を聞いていたとしても全然おかしくは無かった事に初めて考えがおよんで今更ながらに唖然としてしまっただけのこと。