絶対やせて貰います。
余り時間もないから急いで改札を通り小岩井家に向かおうとした矢先
旭君と見覚えのある女性が楽しげな様子で会話している姿が目に飛び込んできた。
「うわぁー撮影とかしてるの?
あの二人めちゃめちゃ絵になるね」
「ホントだぁー」
「イケメンがたいしたことない女連れてると
文句の一つも言いたくなるけどさぁー」
「あれじゃ太刀打ちできないね……」
数人の女子高生が旭君と女性を見ての好き勝手に感想を言っている。
その率直な感想が世間一般の言葉を代弁しているようで声を掛ける事すら恐れ多い心境になり二人を見つめたまま時が止まったように動けない。
そんな私の視線に気が付いたのは旭君
「こいちゃーん」
大きな声で名前を呼びながら二人して私の方へと近付いてくる。
「どうしたの……今日はうちに?」
「うん。マリアさんにマッサージの日
あと和田さんから急にバイトも頼まれて……」
笑顔の旭君は普段と変わらない。
それに比べてボソボソ段々と尻つぼみになりながらもどうにか返事をする私。
その間も隣の女性からは値踏みされるような鋭い視線を注がれているのを意識せずにはいれない。
そして気が付いた……
彼女とは以前に会った事がある。
一年前に旭君と再会した居酒屋のトイレで彼の写真をポイ捨てした
『怒れる美人』その人だった。