絶対やせて貰います。
「あの早速マッサージ、始めましょうか?」
直ぐにそう言ったのは、少なくとも体を動かしている間は無心になれるかも知れないと思ったからだ。
「今日はやめにしましょう」
マリアさんの言葉に驚いて説明もすっ飛ばした独り言が思わず零れる。
「でも……最後になるかも知れないし」
マリアさんとひかるちゃんのダイエットはまだ終わってはいない。
でも正直なところ私が居なくても何も困らない位に順調に体重は落ちてきていたから、時々連絡を入れて状況を聞こうと考えていた。
「こいちゃん。頬に手を当ててみて」
何故そんな事を言われたのか分からなかったけれど素直に顔に手を持って行き触って見たらしっとりと濡れた感触がして自分が泣いていたんだと気が付いた。
「今、頂き物のハーブティー入れるわね。
ハイビスカス入りでね……凄く綺麗な色なのよ」
マリアさんがキッチンに立ってハーブティーを入れてくれている間に気持ちを立て直そうと試みる。
深呼吸を繰り返し静かに目を閉じてマリアさんが戻って来るのを待っていた。
「お待たせ」
マリアさんの声に目を開けたら
湯気の上がるガラス製のティーポットの中でハーブがジャンピングしているのが透けて見えた。
「うわぁーキレー」
「ねっ……綺麗な色でしょ?」
ティーカップに注がれた“それは“マリアさんが言ったように濃い赤紫色がとても綺麗なハーブティーだった。
「甘いモノと取ると元気になるから今日は特別ね」
ウインクしながらそう言って柚子ジャムをたっぷりティーカップに入れて特製のハーブティーを振る舞ってくれる。
口にしたハーブティーは甘酸っぱくて爽やかな味がした。
「少しは落ち着いた?」
「はい。あの……ありがとうございます」
どうして泣いていたのかと聞かれると思ったのにマリアさんは『落ち着いた?』と聞いただけで何も訊ねはしない。
私も順序立てて話をしたいけれど何から話し始めたらいいのか戸惑っていた。