絶対やせて貰います。


***



「こうして『マリア・デラックス』の出来上がり

今思うとあの頃にちゃんとカウンセリングを受けていたなら……

家族全員を太らせる食生活にはならなかったでしょうね。

でも“こいちゃん”には出会えなかったかも知れないから

これはこれで良かったって事にしておくわ」

雰囲気がこれ以上重くならない様に笑顔で16年前の話を締めくくるマリアさん。

告白の内容が劇的過ぎて、私の感情が追い付かない。

それでも不思議に思っていた事柄が次々とパズルのピースが埋まって行くように腑に落ちていく。

小岩井父がダイエットをしているとマリアさんに言えなかった理由が初めて分かった気がしたし、

和田さんのお店でマリアさんがダイエットを始めたと言ったら小岩井父が声を出して驚いていた事も合点がいく。

あの時、小岩井父と旭君が事件には触れても内容を話してくれなかったのは2人とも事件を思い出す事さえ辛かったのだとも分かった……

「マリアさんも一緒にどうですか?」

初めて自宅にお邪魔した日にダイエットを一緒にしないかと気軽に声を掛ける事が出来たのは私が事件について何も知らなかったから、知っていたらそんな事は絶対に出来なかったと断言できる。

言った本人に全く悪気のない言葉でも相手を傷つけたり、戸惑わせたりする事があるのだと改めて考えさせられた出来事だった。



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