絶対やせて貰います。

頭の中でけたたましいドラムロールの音が鳴り響いているのを今すぐ止めてしまいたい。

吐きたいのに吐くモノが無い感じがする胃のムカつきも首から外してしまいたくなる激しい頭の痛みもこれまで一度として経験したことの無い体の異変で思わずジュワリと涙が滲む。

頑張って起こした上半身、自分のベットだと思い込んでいた私が腫れぼったい瞼を見開き見つめた先に広がる光景でここが何処だかやっと理解した。

起き上がる際に立てた身動きの音を聞き取り、この部屋の主が起きてしまったらしい。

「こい。起きたの?」まだ眠そうな声で“ふぁー”と欠伸をしながら両腕を上げて伸びをしたのは飛鳥ちゃん。

ここは昨年から一人暮らしを始めた飛鳥ちゃんが借りている職場から徒歩10分程のマンション、その部屋の寝室だった。

「ちょっと待てて……」そう言ってキッチンに向かった飛鳥ちゃんが持って来たのはペットボトル入りのスポーツドリンク。

「こい。飲んで……」と渡されて初めて猛烈にノドが乾いていたことに気が付いた。

「ありがとー」ホントはどんな風にしてこの部屋に帰って来たのか?

訊かなきゃいけないことは沢山あるのに、受け取った冷え冷えのドリンクの誘惑に勝てずにボトルを口にすると砂漠のように乾ききった体に液体が滲み渡っていく……

スポーツドリンクをこんなに美味しく感じたのも生まれて初めての体験だった。



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