絶対やせて貰います。
「酔って眠るこいが小岩井旭におんぶされてる時に、『ヤダ。そんなにくっ付かないで……』って何度も口にしてたの。
その時の小岩井旭の悲壮感に溢れた表情……思わず同情しちゃった」
飛鳥ちゃんは何とも表現し難い表情でそう告げるから仰天する。
旭君に触られたくない。そんな意味で口にした言葉では無かった。
負のループは無意識の時にでも発動しているらしいと分かり、もう何だか可笑しくさえ感じて笑いそうになる。
「こんな状況でよく笑えるなぁー」飛鳥ちゃんがぼやいたことでホントに声に出して笑っていたことに初めて気が付いた。
最近いろいろな感情に振り回され過ぎて、思わぬところでスイッチが入り自分の体が制御不能になったみたい。
「ハハ……ごめんね」
素直に謝るも、さてどこから話をしたらいいのかも分からない?
そう考えていた時にガチャリと玄関扉を開錠する音が響いたから私は驚きの余りパニックを起こしそうになる。
「こんな早朝に一体誰?なんで飛鳥ちゃんのマンションの鍵持っているの?」私の矢継ぎ早の問い掛けに気まずそうに目を逸らす飛鳥ちゃん。
でも心を決めたのか「私の彼。こいに紹介するね」って言うもんだから今度は私が気まずくなる。
それは是非とも紹介して貰いたい。でも今は人に会えるような状況ではない。そんなことは飛鳥ちゃんだって知ってる筈なのに……
「えっと……また今度って訳にはいかないの?」どうにか抵抗してみるも足音はもう部屋の前まで彼は来ていることを知らせていた。
ドキドキと高鳴る心臓で視線を飛鳥ちゃんから寝室の扉に向けると、そこからコンビニの袋を下げて入って来たのは……
「えっ?ことちゃん。何で……」回らない頭に又しても理解不能な事柄が一つ増えた。