絶対やせて貰います。



遼と初めて会ったのは小学5年の春。

まだ父が社長職に就く前のことで、吉川のおじさま(遼のお父さん)の約6年間にも及ぶ海外勤務の労をねぎらう為に、我が家で帰国を祝う席を設けた時のことだった。

うちの父と吉川のおじさまは同期入社で親しくなり交流はあったらしいけど、海外赴任で長らく日本を離れていたこともあって、私が遼を認識したのはその日が初めてになる。

その当時の私はというと幼稚舎から通う私立の小学校で何不自由なく人生を謳歌している……つもりでいた頃だ。

周りには友達というより取り巻きが大勢いて「カンナちゃんカワイイー」
「凄くキレイ」「いつもオシャレだよねー」「頭良くて羨ましーい」等々私を肯定する人たちばかりに囲まれて、ものスッゴク天狗になっていた時期でもあり、今では私の黒歴史になっている。

その日もいつものように「一緒に遊んであげても良くってよ」遼にそう言ったら

「ふっ……馬鹿じゃないの?」嘲笑を滲ませ鼻で笑われたから心底驚いたのを今でも鮮明に覚えている。

唖然としている私に向って遼は「おまえ。友達いないだろ?」憐れみを湛えた目で見つめられたものだからプライドを傷つけられショックでカッーと頭に血が上って行くのが分かる。

「友達なら大勢います」声高に反論する私に向って「俺はそんな口きく奴と友達になる奴らの気が知れない……別に構ってくれなくていいから」

こんな扱いを受けるのは初めてのことで呆然と立ち尽くしたままの私は、捨て台詞を残し去って行く遼をただ見つめているしかなかった。

だから遼の第一印象は最悪だ。



< 272 / 305 >

この作品をシェア

pagetop