絶対やせて貰います。
「カンナちゃん。変わったよね?」
「ほんと。前みたいに女王様気取りで居てくれた方が扱い易かったのに……」
「何かくれるって言うから期待したら手作りのクッキーって……しょぼ過ぎ。パリのお土産に貰ったマカロンとかなら喜んで貰ってあげたのにね」
「どーする、このクッキー。帰りに飼育小屋に行ってニワトリにあげちゃう?」
「ふふっ……それイイね。そうしよう」
3人の会話に物凄いショックを受けて暫し思考が停止した。
私は人の本質を見抜くことの出来なかった憐れな“裸の王様”だと……
それでも持ち前の負けん気がムクムクと湧き上がってくる。
個室のドアを勢いよくバンッと開き3人と対峙する方を選択したのだから……
3人は突然現れた私に呆気に取れられ間抜けな表情をしている、それだけは落ち込んだ気持ちを少しだけ浮上させてくれた。
一人が言い訳を口にしようとしているのを一にらみで黙らせる。
「しょぼ過ぎるクッキーなんて持ってきてごめんね。でもニワトリにあげるくらいなら持ち帰るから返して……」黙りこくっている3人に教室でクッキーを返してもらって今に至る。
「だから……遼の言う通りだったの」
我慢していた涙がポロリと零れ頬を伝いクッキーの袋にポタリと落ちた。
「いや。俺が間違ってた……カンナはちゃんと友達居るだろ?俺が……
これ。もーらい」
遼は照れ臭いのか?
涙で濡れた袋からクッキーを取り出して1枚まるごと口に放り込みザクザク言わせながら咀嚼して
「やっぱりうめぇー、カンナも食え」と強引に私の口の中にも1枚まるごと押し込む。
泣きながら食べるのは意外と難しい……
すすり泣く合間に咀嚼してどうにか食べ終えたクッキーの味はほろ苦くてとても優しい味がした。