絶対やせて貰います。

「坊主。助かったよ……英語が話せるなんて凄いな」

おじさんが感心してそう言ったのに遼の返事は思いも寄らないものだった。

「おじさん。俺さアメリカで6年間も生活してたから英語が話せるのは当たり前なの。それより日本語って難しいよね?」

アメリカでの生活を思い出しているのか?本当に難しそうな顔して遼は言う。

「おじさんは日本にしか住んだことないからよく分からないな……日本語は難しいかい?」

「俺は母さんに日本語教わったんだ。家の中では英語は禁止で約束を破ったらおやつ抜きだよ。育ち盛りの息子に酷いと思わない?」

遼の憐れみを誘う言い方が可笑しかったのかおじさんは笑って「そりゃー酷いな」と相槌を打つ。

「だから……英語が話せることを褒められるより日本語が話せるってことを褒めて貰いたい訳。だって努力して覚えたのは日本語だから……」

英語をネイティブ並みに話せることより努力して覚えた母国語を褒めてもらいという遼の気持ちが分かって胸が熱くなる。

「母さんのお蔭で日本語話せて良かったな坊主。偉いぞー」人の良いおじさんは遼の気持ちを汲んで褒めてくれた。

「ところでその娘(こ)は坊主の彼女か?」ヒヒッと笑って遼をからかうおじさん。

「彼女は俺の友達。親友なんだ……」少し頬を赤らめて照れる遼に伝染して私の顔まで真っ赤に染まる。

「あぁー女友達、ガールフレンドだな坊主」おじさんは得意げに英語を披露する。

これ以上からかわれては堪らないと遼は私の腕を掴みこの場を立ち去ることにしたらしい。

「おじさん。それじゃ俺たちも行くね……さよなら」と会釈して背を向けて歩き出した私たちの後を……

「じゃーな。二人とも仲良くやれよーヒヒッ……」おじさんの笑い声が追ってきた。



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