絶対やせて貰います。
遼の部屋でアルバムを発見した私は思わず手に取り、中に納められている写真を食い入るようにして見つめる。
アメリカに居た頃の幼い遼が外国人の友達と仲良く肩を組み満面の笑顔でこちら見ているが……口元が笑える。
「プッ……前歯がない」
またハロウィンのイベントなのか?
おばけのコスプレをしている姿がとても可愛くて顔が思わずニヤけてしまう。
あのハッキリとした性格は外国人にモテるのか?
碧眼、金髪、巻き髪のお人形さんみたいに可愛い女の子と腕を組んだツーショット写真を見つけた時はイラッともしたけど……
「お、おまえ。何勝手に見てんだよ」
お茶の用意して部屋に入って来た遼は、急いでアルバムを取り上げようとしてカップ&ソーサーをカチャカチャ言わせながら勉強用のローテーブルに乱暴にトレイを置く。
取り上げられては続きが見れないとアルバムを掴んで遼の8畳しかない部屋の中を逃げ回る私。
それを遼が追いかけ回す。
ローテーブル越しにフェイントを掛けながら逃げ回っていたのに、その頃身長が168cmの私より10cmも大きくなっていた遼は長い腕を伸ばしてアルバムの奪還に成功する。
「悪いなカンナ……」得意そうに笑いながらアルバムを掴んだ方の腕を天井に向けて伸ばし『どうだ。取って見ろ!』と言わんばかりの姿が憎らしい。
「えい!」捨て身のジャンプでアルバムを奪ったまでは良かったけど体勢を崩して倒れそうになる私に
「このバカ」と言いながら受け身で私の体を庇ってくれた遼。
ガツンと顔面への衝撃の後に何故か柔らかな感触を唇に感じて驚いて見開いた目の前には遼の顔がある。
密着した体を少し離し、状況をよく見ると私が遼を押し倒した格好になっている。
これをキスとカウントするなら……”顔面衝突ファーストキス”ってことだ。