絶対やせて貰います。

「おばさまになんて言われたの?」

「カンナは父さんの勤める会社の社長令嬢……社長の大事な一人娘。

もし俺が間違ったことをしでかしたら父さんは責任を取って会社を辞めることになるし、頑張ってきたことも水の泡になる……そんな感じのこと……」

努めて何でもない風を装い感情を交えず淡々と話しをする遼だけど、納得しきれていないのは長い付き合いだから分かってしまう。

おばさまの心配は親なら当然のことなのだろう。

如何にも大人が言いそうなセリフだなって別段驚きはしなかったけど、ショックを受けなかったと言ったら嘘になる。遼と私は親友でいることは歓迎されても恋愛関係になることは歓迎されないらしいから……

この歳にもなれば、うちの両親と遼の両親の関係性やお互いの置かれた立場の違いも頭では十分に理解は出来るけど……

それでもまだ大人になりきれない私は感情が追い付いていかないのだ。

頑固な遼は一度言い出したら簡単に自分の信念を変えないのも分かっているから私がここで何を言っても状況は変わらないと諦めに似た思いに心が塞ぐ。

それなら自分のプライドを保つためだけにも『遼と会えなくなることなんて、大したことじゃない』と遼に見せ付け毅然とした姿で立ち去りたい……

そう思うのに……

「うん。分かった今日で親友はおしまいだね」

無理やり作った笑顔でそう告げたら、自分の言葉で私自身が傷ついている。


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