絶対やせて貰います。
私が入学した高校は文武両道を教育方針に掲げている進学校だからスポーツもとても盛んで、入学式を終えたばかりの早い時期に新入生歓迎球技大会なるものが大々的に開催されるのが伝統になっている。
スポーツを通して親睦を深め、皆が早くから打ち解けることが狙いらしいのだけれど……正直とても面倒臭い風習だと思う。
毎年。新入生女子の仲から代表者を選び、一学年分の鉢巻200本を新調するのも習わしらしく、貧乏くじを引いてしまった私はその役目を果たさなくていけないらしい。
家庭科実習室には私と同様に貧乏くじを引いたメンバーが仕方なしに集まっていて、その誰からも覇気を全く感じられない。
この中の誰一人としてその役目を喜んでいる者などいない……そんな状況で果たして200名分の鉢巻を3時間余りで製作が可能なのかと疑問に思えてくる。
先に来ていた一人が裁ちばさみで鉢巻用の布をジョキジョキ言わせながら切っているのを見た時には眩暈を起こしそうになった。
こんな感じで作業をしていたら明日になっても200本の鉢巻など出来る訳がない、ここは誰かが先頭に立ち陣頭指揮を執るしかないようだ。
私は渋々その役目を勤める為に近く居たショートカットの女子に声をかけた。
「そこの大きいあなた……この布の端を掴んでくれない」
「ちょっと……自分だって結構な長身なのに『大きいあなた』って一言多いよ」
ハッキリ言い返しても素直に布の端を持ってくれたのが木村飛鳥で、その後私の親友の一人になる。
学校の裁ちばさみは良く手入れをされているから切れ味は抜群でジョキジョキと動かさなくても刃の部分を当てて引くだけでスッーーーと気持ち良いくらい切れる。
それを見ていた周りの女子たちから「「「おぉぉぉーーー」」」と感嘆の声が上がるのがくすぐったくて変な感じだったけど、私が直ぐに指示を出したら漸く皆も動き始めた。
二人一組で裁断をするグループとアイロンを使って縫いしろを作るグループにミシンを使って仕上げをするグループに分かれて作業を始めたら効率よく稼働し始めたからホッと胸を撫で下ろした。