絶対やせて貰います。
懲りずに近付いて来る遼を警戒して、こいが弁当を遠ざける。
「エビフライは許してあげますが、私は安西先生ではありません。
アゴ肉を『タプタプ』するのはご遠慮ください」
「うそ。どすこい……スラムダンク知ってんの?」
嬉しそうな表情を見せる遼とこいは漫画の話で盛り上がっている。
「このデリカシー欠落男、彼氏でもないくせに……こいの顔に気安く触るな!!
今度触ったら兄貴たち呼んでアンタのことボッコボッコにしてやるから覚えとけ
てかっ……もう絡んでくんな!!」
優しい飛鳥はデリカシーのない遼に本気でキレそうになっている。
「おぉー怖っ!!」
自分の体を抱きしめてフルフルと震える仕草をする遼は懲りた様子は皆無で、このやり取りを楽しんでいるのが窺える。
それなのに私は絡まれているだけで何も悪く無い『こい』にも、遼に蹴りを入れて本気でキレかかっている『飛鳥』にも理不尽な嫉妬心を抱いていた。
そんな自分自身が一番許せなくて落ち込みかけていた時に耳に届いたのが……
「デブのくせに男に色目使うとか身の程知らず」
遼のファンがこいに嫉妬して心無い罵声を浴びせる声だった。