絶対やせて貰います。

こいがダイエットを始めてから約一年が経った。

途中貧血で倒れるなんてことが一度だけあったけど、それ以外は順調に体重も落ちていて現段階で15kgの減量に成功している。



高校卒業の日。

式典を終えた後、飛鳥と一緒にこいを探していたら教室に向ったらしいと聞いて迎えに行くことに……

「こいー」

名前を呼びながら教室の中に入って行くと辺見さやかと一緒に居るのが見えた。

「迎えにきたよ」って言いながらも彼女には思わず冷ややかな視線を向けてしまう。

「飛鳥はファンに捕まってたから暫く掛かりそうだけど……どうする?」

こいが返事をする前に声をかけてきたのは彼女の方。

「御札のお蔭で私も体重減らせたの、だから上杉さんにも感謝してる。
ありがとー」

彼女からお礼を言われるとは思ってもいなくて驚きに目を瞠ってしまった。

そんな私の様子をこいが声を出して笑って見ている。

私が驚きから体勢を立て直せないでいるうちに彼女は本当に伝えたかった言葉を続ける。

「錦野さんも私も頑張ってるんだから……

今度は上杉さんの番だからね。

勘が鋭いあなたの事だから私が言わんとする意味も分かるでしょ?

まぁー精々頑張って……」

彼女の思いはちゃんと私に伝わった。

同じ人に恋心を抱き常に視線を向けていた私たちはある意味同士なのかも知れない。

そんな彼女だから私の気持ちに気が付いて最後の方は彼女らしく皮肉めいた微妙なエールで私の背中を押したつもりなのだろう。

晴れやかな表情をした彼女が颯爽と教室を出て行くのを見ながらポロリと飛び出したのは……

「ホント……嫌な女」

『もーとっくに振られました』とは決して口には出来なくても、彼女の励ましの言葉をとても嬉しく受け取ることが出来たから私は微笑んでいられた。



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