絶対やせて貰います。

私と遼の彼女が似ていると言う“こい”の言葉が切っ掛けだった……

やっぱり彼女と同じヘアスタイルなのは正直なところ気分が良いものではなくて、あの後直ぐに小学生の頃からずっと伸ばしていた髪を顎のラインの長さまでバッサリと切る。

少し前下がりのボブカットにしてイメージチェンジを試みた。

先に講義室で席を取って待っていた“こい”は髪を切った私を見て……

「うわぁー大人ぽくてカッコイイ……でもどうして同じボブカットなのに私だとオカッパって言われるんだろ……」

自分のヘアスタイルと比べてため息を付いて落ち込んでいる。

前髪パッツンの“こい”とワンレングスの私とでは同じボブカットでもかなり雰囲気が違っている。

「その前髪パッツン。私には似合わないもの……でも“こい”には良く似合ってて可愛いと思うよ」

私の言葉に落ち込んでいた“こい”も「そうかなぁー」と笑顔を取り戻した。

髪を切って雰囲気の変わった私に感想を言いに来る人たちが絶えなくて、その人だかりに何だろうと視線を向けてきた遼が私を見て驚きの表情を浮かべていたけど話しかけられることは無かった。

私が髪を切ったのは、たんに遼の彼女と同じヘアスタイルが嫌だったからというのが理由ではない……

もういい加減『遼を好きでいることをやめる』そんな心境になり、前進する為の儀式みたいなものだったのかも知れない。軽くなった頭みたいに心も早く軽くなって私も前進したい……

そんな願いを込めて私は長かった髪を潔く切り捨てた。



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