絶対やせて貰います。

それから直ぐ後にバイト先で知り合った1つ年上の人と”こい”が付き合うようになったけど私はこいの初カレに良い印象を持っていなかった。

こいのバイト先に行った時に見かけたその人はとても軽い印象で、仕事中にも関わらず私をナンパするような人だったから……

バイト帰りに知らない男の人たちの強引な誘いに怖い思いしていたところを助けて貰ったというのが付き合う切っ掛けだったと聞いても、正直うさん臭いなって思っていたくらいだ。

お互いバイトも忙しく、彼は就職試験を控えていてデートにも行けないと寂しそうにしていた“こい”に『彼と付き合うのやめなよ……』とも言えず、私は彼との付き合いを快く思ってませんと態度で示すことしか出来ない。

「こいはこの後、高橋さんとデートなの?」

この話題になると顔をしかめ眉間に皺が寄ってしまう私とは対照的に、嬉しそうな満面の微笑みで「うん」返事をする“こい”。

「週末は父と母が親戚の結婚式に泊りがけで外出するし、ことちゃんもバレー部の合宿で不在になるから家で手料理を食べてもらうつもり」と予定を教えてくれた。

誰もいない家で彼に手料理を振る舞うと張り切っているこいが心配でならないのに口に出来たのは……

「そう」の一言だけ。


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