絶対やせて貰います。

父が言う将来有望と見込んだ若者が社員なのか、知り合いの息子なのかは分からないけど……どちらにしても全く興味はない。

近い将来、まだ見ぬその人を受け入れ一緒になることを真剣に考えなくてはならない時が来るのかも知れなくて、今までの努力が無性に虚しいものに思えてくる。





社長から娘と結婚しないかと勧められた若手有望社員が自分の出世に目がくらみ『糟糠の恋人』を捨て我が儘な社長令嬢との結婚を決める。

将来は安泰でも結婚生活は波乱尽くめで安らぎは全く得られない、そんな時にふと思い出すのは終始控え目でいつもでも癒し尽くしてくれた彼女のこと。

そんな折、彼女との偶然の再会。

彼女は幼い頃の彼と瓜二つな顔をした男の子の腕を引いて呆然と立ち尽くしている。

最初は頑なに拒絶された彼だったが……

彼女の優しさに付け込み、まんまと親子三人での安らぎのある生活を手に入れた。

何も知らない我が儘な妻は……

自分は愛され尽くされるのが当然と傲慢な笑顔を浮かべて、愛のない空っぽな豪邸の中で夫の帰りをひたすらに待ち続ける……





「はぁーーー」

父の話を聞いた時、頭に浮かんだのが誰一人として幸せになれない、救いが無く安っぽくてベタな展開のドラマ……私に宛がわれた配役は我が儘な社長令嬢で、まさに悪役。

「ふふっ。私、いつからこんなに妄想が激しくなったんだろ……」って思わず苦笑い。

この身を焦がすほどの激しい恋や愛に溢れた夫婦生活とは縁が無いとしても穏やかな信頼関係ぐらいは築ける相手と一緒になりたい……そう思うのは贅沢なことだろうか?



< 301 / 305 >

この作品をシェア

pagetop