絶対やせて貰います。

まさか父の会社にエントリーシートを提出することになるとは正直思っていなかったし、書類審査の結果をバクバクと胸を波打たせながら、まるで裁判の判決を聞くような心境で待つことになるとも思っていなかった。

父と会話をした翌日に、“こい”につい愚痴ってしまったら……

「カンナちゃんのお父さんって凄いね。カッコイイ……」って……

”こい”は瞳に星を浮かべたままうっとりと微笑み父を大絶賛するけど意味が分からない。

「だって……ホントは無条件でカンナちゃんを入社させたいのはお父さん自身だと思うから。

それを人事担当者に任せるのはカンナちゃんのことも、会社の人事担当者も信頼してるって証でしょ?

そんな社長の経営する会社なら是非とも入社したいって思うもの……」

”こい”はそう言ってエントリーシートを私と一緒に提出して二人で就職試験に挑むことに……

書類審査で落とされる事はなくて、二人とも筆記試験に合格。

試験会場には遼も居て、私を見て凄く驚いた表情をしていたけど……私だって同じくらい驚いた。

一次の集団面接も無事合格した、でも次の二次面接の出来次第で自分の将来が大きく変わると思ったら心配にもなる……

会場で面接官に知り合いが居ないかと見渡すけど誰一人として面識は無くガックリと肩を落とす。

『小心者の姑息な考え方だったなと……でも人間味あるでしょ?』って開き直ると心に凪が訪れて

『何処からでも掛かってこい』そんな心境になれた。



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