絶対やせて貰います。
従兄は父に会社に入らないかと誘われた時も断って大学院に進み、修士課程を終えると母校で講師をしながら研究に没頭する日々を過ごしている。
池内家と会社には接点がないからと油断していたから驚いてしまったのだ。
一旦下を向いてしまった顔を上げて面接官の彼の顔をジッと見つめて話し始める。
「軽い気持ちで就職試験を受けた訳ではありません。
父の名前を出さないというのが父との約束だったので……
もし内定が決まったら社長のところにも連絡が行くと聞いたので、
そこで正式な書類と差し替えて貰うつもりでした……はぁー」
一気に喋って脱力。
「そうでしたか……」
もう公平な判断をして貰うのは難しいだろうなと思っていた。
「社長は何故、自分の名前を出すなと言ったんだろう?」首を傾げて不思議そうにしている面接官。
「父から内定を貰えなかったら、お見合いをしてみないかと言われています。
父は私が会社に入るより違う形で会社に貢献して欲しいのでしょう。
たとえば業務提携を考えている会社の跡取り息子とか優秀な社員と婚姻関係を結ばせて……」
合点が行ったのか、「あぁーなるほど……」と呟くのを聞いていたら益々内定を貰うのは難しいと思えてくる。