絶対やせて貰います。

一新入社員が出来る事と婚姻に寄ってもたらされる利益を天秤に掛けたら、どちらに大きく傾くかは一目瞭然だもの。

「あなたは大変優秀な方だと思います。

ですから当社でなくても是非とも欲しいと考える会社は幾らでもあるかと……」

卒の無い断り文句だなと苦笑いを浮かべてしまうのは致し方ない。

「ありがとうございます。でもこの会社で働くことしか考えていなかったので……

他社の試験を受けるかは合否通知を受け取ってから考えます」

近いうちに父からお見合いの件も含めてどうするつもりなのかと決断を迫られそうだ。

「理由は分かりました。お引止めして申し訳ありません」

「いえ。こちらこそ、お時間を取らせてしまいました。失礼します」

今日の面接は私が最後のようだ、それも業務は山のようにあるのだろう慌てて立ち上がった面接官はエレベターの方に向って足早に歩いて行った。

ネガティブな思考に囚われていた私はこの会話を聞かれているとは予想だにしていない……

でもそのことが切っ掛けになりこの後、怒涛の展開が待ち受けているとは思いも寄らなかった。



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