絶対やせて貰います。
それは小岩井君を隠し撮りした動画だった。
私が気を失う前に目にした光景と同じ、友人たちと談笑する小岩井君の姿がアングル違いで撮影されていた。
「こい、こい……」
私の名前を叫ぶ飛鳥ちゃんの声が聞こえたと思ったら映像は飛鳥ちゃんの腕に縋り付きながら倒れている私と飛鳥ちゃんへとアングルが反転する。
そこに駆け寄って来たのは向こう側にいた小岩井君とその友人たち。
「頭……打ってない?」飛鳥ちゃんに確認する小岩井君。
「頭は打ってない……私の腕にしがみ付いてたから」動揺しながらも倒れた時の様子を伝える飛鳥ちゃん。
「俺が保健室に連れて行くから……」小岩井君の言葉に驚いた様子を見せる友人たち。
「待てよ旭(あさひ)……今おまえにケガされたら試合どうなるか分かってんのか?
保健室に担架(たんか)ぐらいあるだろ?
俺が取りに行くから待ってろ……」
同じサッカー部の人だろうか?
私を保健室に連れて行くと言う小岩井君の言葉に焦っている様子が良く見て取れる。
「そーだよ旭……無理すんな!」他の友人からも小岩井君の行動をたしなめる言葉が続くが……
「保健室を往復してる時間が勿体無いからこのまま連れてく……俺が立ち上がるまで皆ちょっと手を貸して」飄々とそう言ってのける小岩井君に友人たちも諦めたのか?
「一、二の三」と掛け声を合わせて小岩井君が私を抱き上げるのを手伝ってくれていた。
「「小岩井先輩いやーーーやめてーーー」」
近くに居たであろう、小岩井ファンの声までバッチリ入っている。