絶対やせて貰います。
吉田さんとの約束を守り飛鳥ちゃんにパウンドケーキを渡して貰った日以降、私から小岩井君への接触は全くない。
でも相変わらず”小岩井センサー”は発動中で何処に居てもその姿を見つけては『あぁーやっぱりカッコイイー』と密かに目を楽しませて貰っていたのだけれども……
今までの私から小岩井君への一方通行だった視線が、私の存在を認識した小岩井君から視線というか微笑み返し的なレアな状況に追い込まれる出来事が度々起こって困惑気味なの。
でもその時は小岩井君の隣にいる吉田さんからも射る様な眼差しを同時に向けられるから私は微妙な笑顔を浮かべて直ぐに視線を逸らすのが精一杯なんだよね。
私の勘違いでなければ小岩井君は私に話したいことがあるみたいで、何やら話し掛けたそうな素振りを見せる。
でもそんな彼を吉田さんが黙って見ている筈もなく、彼が私に声を掛けそうになると
「旭君……今度の土曜日時間ある?一緒に図書館で勉強しよ……」
吉田さんがすかさず小岩井君に声を掛けて注意を逸らすから
「うん、大丈夫だけど……」
小岩井君が吉田さんに向って返事をしている間に私は二人から既に遠ざかっている。
そんな状況が何度も繰り返されていて結局ところ私はあの件以来、小岩井君と話をする機会はない。
別段私の方は会話をする必要性を感じていないから正直なところ、この状況がちょっと面倒臭い。
『小岩井君に助けて貰う前の好きなだけその姿を愛でられてた時の方が気楽で良かったのになぁー』
「はぁー」と何とも贅沢なため息を零す日々を過ごしている。