絶対やせて貰います。

小岩井君の第一声は……

『……なんだよコレ?』かな

『……ストーカーかよ』かな

『……気持ちわるっ』かな

『……キモッ』かな

あぁーどうしよう、どうしてこんなことになった?

思わず目を瞑り、最悪の事態に備えていた私に奇跡が起こる。

小岩井君は唯「はい」と言ってスケッチブックを手渡してくれたから……

手元に戻ったスケッチブックを信じられない思いでマジマジと見つめる私

田中先生とは違い小岩井君は中を見る事無くスケッチブックを返してくれたのだ。

「えっーと錦野さん卒業おめでとー」

同じ卒業生なのに小岩井君からおめでとうの言葉を貰って私はガチガチに緊張していた体から少し力が抜けたように感じた。

「小岩井君もおめでとー二回も迷惑掛けてごめんなさい。助けてくれてありがとー」

短い言葉だったけど、お詫びと感謝の言葉は心からのモノだった。

「そんな事ないよ、俺もずっとお礼が言いたかったんだ

”パウンドケーキ”今まで食べた中で一番美味しかった……それで……」

小岩井君の言葉が頭の中をリフレイン。

”今まで食べた中で一番美味しかった””今まで食べた中で一番美味しかった””今まで食べた中で一番美味しかった””今まで食べた中で一番美味しかった””今まで食べた中で一番美味しかった”

あぁーこの言葉だけでごはん何杯でもいける。

幸せな妄想に浸っていたら……


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