絶対やせて貰います。
「写真を勝手に捨てるのもなぁーもう面倒なモノ置いてかないでよ」
そう言いつつも美人をあそこまで怒らせた人がどんな顔をしているのか好奇心を押さえられずに写真を裏返して見たら……私の見知った人が記憶と違(たが)わない神々しくも眩しい笑顔をこちらに向けている。
「うそ……小岩井君なの?」
つい先程カンナちゃんが高橋君のことを小岩井君に似ていると言い出して私たちの話題に名前が上がったばかりの人。
「なんで……もしかして今この店に小岩井君が居るってこと?」
あまりの衝撃に一人ブツブツと呟く私を人が見ていたなら、かなり怪しかったに違いない。
「カンナちゃんと飛鳥ちゃんに報告しなきゃ」
慌ててトイレから飛び出した私はトイレ前の通路を歩いていた男性の背中に思い切りぶつかってしまった。
「イテッ」
若い男性は私がぶつかった背中に手を当てながら振り返る。
ぶつけた顔も痛かったけど、急に飛び出したのは私だから額を擦りたいのを我慢して”ブン”と勢い良く体を折り曲げ「急に飛び出してごめんなさい」と詫びてから顔を上げたらそこにも見知った顔があった。
「あっ……後藤君……」
高校の頃とあまり印象の変わらない後藤君は高1の時のクラスメイト。
そう言えば私が貧血で倒れて小岩井君が保健室に運んでくれた時に私を持ち上げるのを手伝ってくれたうちの一人、確か小岩井君と同じくサッカー部に所属していたはず。
「えっ?俺のこと知ってるの?可愛い子は”絶対”忘れないのにな?」
私が誰か分からない後藤君はクエスチョンマークで一杯な顔をして私の顔を眺めている。
いつまで経っても思い出して貰えそうにもないので自分から名乗る事にした。