絶対やせて貰います。
カンナちゃんが動画を再生したら一般男性よりも大柄な男たちが体を密着させて小さな画面を食い入るようにして見入っている姿は滑稽ですらあった。
吉田さんが私に向かって「旭くんに親切にして貰ったからって、それを理由に付き纏うなんてことしないで頂戴ね」と話しているところから始まり。
私が吉田さんに「謝ってください」と詰寄っている場面の音声だけは、こちらに”バッチリ”届いている。
別れたとしても好きだった人の知らない一面を見せられるのは良い気持ちではないよね?
私は小岩井君がどう思ったのだろう……そればかりが気になって仕方なかった。
男性陣が動画を見終わって直ぐに感想を口にしたのもやっぱり後藤君。
「おっ…女ってこえーーー」
あのー、私たちも女だって分かってる?
ホント後藤君は失言が多すぎだよ。
「アホか……吉田と一緒にするな!」
今度は飛鳥ちゃんに”アホ”と言われている後藤君。
彼女が居なさそうな訳が私にもなんだか分かった気がする。
全員が驚くと思っていたのに、小岩井君と遼君は意外な事に顔色一つ変わっていない。
「りおんは間違ってる」
そこに居る皆が小岩井君の一挙一動を固唾を飲んで見守っていた。
「上杉さんと木村さんが錦野さんと居たのは唯一緒に居るのが楽しかったからだよね?」
カンナちゃんと飛鳥ちゃんに確認するように話をする小岩井君。
二人は黙ったまま”うん”と言うように頭を縦に勢いよく振ってみせた。
「三人がお昼休みに大きなお弁当を食べてる姿を何度も見掛けたけど
本当に美味しそうな表情で食事を楽しんでいたし、本当に楽しそうな表情で笑っていた。
あれは取り澄ました作り笑顔とは全然違う、心からの笑顔だったよ。
だから……りおんは間違ってる」小岩井君は何の躊躇いもなくそう言い切った。