マネー・ドール -人生の午後-
 将吾は、優しく、私を抱きしめた。
 でも、コテージの時とは違う。
昔みたいに、熱いカラダで、私を……欲しいって言ってる。

「将吾……好きなの……まだ……」
 硬い胸の奥から、心臓の音が聞こえる。ドク、ドクって、鼓動と熱が伝わってくる。
「……一日も、忘れたことはない……」
 将吾の指が私の髪をかきあげて、頬を伝って、唇を撫でて……私達は、キスを交す。
 昔みたいに、熱くて、甘くて、激しいキス……
「好きや……真純……」

 もう、どうなってもいい。ねえ、将吾、私と遠くに行こうよ。何もかも捨てて、私と、ね、誰も知らないところへ。お金なら、あるのよ。二人で、どこかへ……

「愛してる、将吾……愛してるの……」
 熱い目。熱いカラダ。あなたが欲しい。ねえ、将吾、私ね、あなたに……抱いてほしいの……

「真純……キレイになったな……」
 素肌の私達。汗ばんだ肌が、ベタベタするね。
 あなたの硬いカラダ。昔のままね。私、あなたのカラダが好き。逞しくて、硬くて、大きなカラダ。私を包み込んでくれる、そのカラダがね、好き……
「真純……お前が……欲しい……ずっと……真純……」
 将吾の指が、私を濡らしていく。将吾の熱い息が、耳たぶを擽る。
「昔みたいに……して……ねえ、愛して……将吾……」

 なにも、見えない。ここがどこかってことも、時間も、もう、将吾しか見えない。

 将吾の汗ばんだ硬い体が私を包んで、短い髪が、首筋にチクチクする。
 慶太とは違うカラダ。慶太とは違う匂い。慶太とは違う……あなた……

「真純の匂いがする」

 空白の時間。
 飛び越えた先は……

 いけない。
 いけないのに……でももう……慶太、ごめんなさい……私、将吾が……
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