マネー・ドール -人生の午後-
慶太は私をソファに座らせて、ギュッと、右手を握った。
「手紙……」
「手紙?」
「慶太の部屋の押入れから、昔の荷物が……」
「昔、杉本からあずかったんだ」
「……どうして、言わなかったの?」
「言えなかった」
「どうして?」
「たぶん、自信がなかったのかな。あの荷物を見せたら、真純が杉本の所に戻るんじゃないかって、不安だった……俺は、杉本からお前を、金で奪ったから……杉本とお前は……本当に強い絆で……愛し合ってるんだなって、悔しかった」
「私のこと……本当に好きだったの?」
「たぶんな。自分でもわからないんだ。でも、ただ、真純を失いたくなかった。俺のものに、したかった」
彼の声は震えていて、きっと、必死で、涙を堪えている。私を不安がらせないように、必死で、優しい顔をしている。
「手紙のこと、知ってたの?」
「それは……わからない。手紙って、何?」
「荷物の中に、手紙が入ってたの」
「荷物は、開けただけで、中は出してないから……手紙が入ってたんだ」
「うん……それを読んでね……私……」
「杉本のこと、思い出したんだね、また」
私は、素直に、頷いた。
「それで、会ったんだね……ここで」
「母親のこと、心配してくれて……連絡くれたの。だから私、会いたいって、言ってしまったの……将吾はね、慶太がいないってわかると、帰るって言ったの。でも、私……将吾、優しいの……いつもね、将吾は私に優しいの……」
「杉本は、誰にでも優しいやつなんだよ。お前を奪った俺にも、あいつは優しくしてくれた。俺を責めることなく、幸せにしてやってくれって、そう言ったんだ。俺は、あいつには勝てないって、あの時思った。真純の荷物をあずかった時、俺は永遠に、杉本には勝てないって」
慶太はネクタイを外して、丸めてテーブルに置いた。そこは、将吾のスマホとタバコが、置いてあった場所。
ほんの数時間前、私は、ここで、将吾と……
それも、将吾の優しさ? 優しいだけなの? 私のこと、愛してるわけじゃないの?
愛して……るのは、私じゃなくて……もう、私じゃない。私じゃない……わかってるのに……
「手紙……」
「手紙?」
「慶太の部屋の押入れから、昔の荷物が……」
「昔、杉本からあずかったんだ」
「……どうして、言わなかったの?」
「言えなかった」
「どうして?」
「たぶん、自信がなかったのかな。あの荷物を見せたら、真純が杉本の所に戻るんじゃないかって、不安だった……俺は、杉本からお前を、金で奪ったから……杉本とお前は……本当に強い絆で……愛し合ってるんだなって、悔しかった」
「私のこと……本当に好きだったの?」
「たぶんな。自分でもわからないんだ。でも、ただ、真純を失いたくなかった。俺のものに、したかった」
彼の声は震えていて、きっと、必死で、涙を堪えている。私を不安がらせないように、必死で、優しい顔をしている。
「手紙のこと、知ってたの?」
「それは……わからない。手紙って、何?」
「荷物の中に、手紙が入ってたの」
「荷物は、開けただけで、中は出してないから……手紙が入ってたんだ」
「うん……それを読んでね……私……」
「杉本のこと、思い出したんだね、また」
私は、素直に、頷いた。
「それで、会ったんだね……ここで」
「母親のこと、心配してくれて……連絡くれたの。だから私、会いたいって、言ってしまったの……将吾はね、慶太がいないってわかると、帰るって言ったの。でも、私……将吾、優しいの……いつもね、将吾は私に優しいの……」
「杉本は、誰にでも優しいやつなんだよ。お前を奪った俺にも、あいつは優しくしてくれた。俺を責めることなく、幸せにしてやってくれって、そう言ったんだ。俺は、あいつには勝てないって、あの時思った。真純の荷物をあずかった時、俺は永遠に、杉本には勝てないって」
慶太はネクタイを外して、丸めてテーブルに置いた。そこは、将吾のスマホとタバコが、置いてあった場所。
ほんの数時間前、私は、ここで、将吾と……
それも、将吾の優しさ? 優しいだけなの? 私のこと、愛してるわけじゃないの?
愛して……るのは、私じゃなくて……もう、私じゃない。私じゃない……わかってるのに……