マネー・ドール -人生の午後-
(2)
ハンドブレーキを解除して、ヘッドライトをつけた。
ギアを入れると、エンジンが回って、ブレーキペダルから、足を……はずせない……はずれない……
『受けとめてやってくれ。過去も、今も、未来も、全部』
どこからか、杉本の声が聞こえた。
そして、耳の奥で、真純の声が聞こえる。
『私のこと、好き?』
真純……真純……好きだよ……好きなんだよ……
「好きなんだよ! 真純! 愛してるんだよ!」
置いていけるわけがない。
一人にできる、わけがない。
俺にはそんな選択、できるわけがない。
「慶太……どこに行ってたの?」
「ごめんごめん。銀行に、お金をおろしにね」
真純は子供みたいに背中を丸めて、下を向いて、泣いていた。
雑にまとめた髪は乱れていて、化粧ももう落ちてしまってる。
こんな真純は、初めて見た。
いや……これが本当の真純なのかもしれない。
虐待され、虐められ、荒んだ少女時代の真純は、こうだったんだろう。
もし、その時代に真純と出会っていたら、俺は好きになっただろうか。
いや、きっと、眉を顰めて、せせら笑っていた。周りと一緒になって、虐めていたかもしれない。俺は、そんな、人間だった。
俺を変えてくれたのは……真純……真純なんだよ……
「すみません。手持ちがなかったもので」
支払いを済ませ、俺達は駐車場へ向かった。
真純はずっと泣いていて、俺はその手を握ることくらいしか、できない。
だって、気を抜いたら、俺も、泣いてしまうから。
ギアを入れると、エンジンが回って、ブレーキペダルから、足を……はずせない……はずれない……
『受けとめてやってくれ。過去も、今も、未来も、全部』
どこからか、杉本の声が聞こえた。
そして、耳の奥で、真純の声が聞こえる。
『私のこと、好き?』
真純……真純……好きだよ……好きなんだよ……
「好きなんだよ! 真純! 愛してるんだよ!」
置いていけるわけがない。
一人にできる、わけがない。
俺にはそんな選択、できるわけがない。
「慶太……どこに行ってたの?」
「ごめんごめん。銀行に、お金をおろしにね」
真純は子供みたいに背中を丸めて、下を向いて、泣いていた。
雑にまとめた髪は乱れていて、化粧ももう落ちてしまってる。
こんな真純は、初めて見た。
いや……これが本当の真純なのかもしれない。
虐待され、虐められ、荒んだ少女時代の真純は、こうだったんだろう。
もし、その時代に真純と出会っていたら、俺は好きになっただろうか。
いや、きっと、眉を顰めて、せせら笑っていた。周りと一緒になって、虐めていたかもしれない。俺は、そんな、人間だった。
俺を変えてくれたのは……真純……真純なんだよ……
「すみません。手持ちがなかったもので」
支払いを済ませ、俺達は駐車場へ向かった。
真純はずっと泣いていて、俺はその手を握ることくらいしか、できない。
だって、気を抜いたら、俺も、泣いてしまうから。