マネー・ドール -人生の午後-
「真純! どこに……」
「あら、慶太、おかえりなさい」
そう、笑顔で言った真純の後ろには、なぜか山内と藤木が立っていた。
「なんだよ、お前ら!」
「もう、慶太の車、届けにきてくれたんだよ。駐車場の場所、教えてあげたの。さあ、あがって」
いつものタオル地のワンピースにスッピンの真純に、部下二人はにやけ気味で、おじゃまします、と遠慮なく、ずかずかと入っていく。
「わあ、セレブですね! オシャレだなぁ!」
藤木がキョロキョロと見回す。確かに、インテリアのプロだからな、真純は。
山内が、ちらりと藤木と俺を見て、大きなバラとかすみ草と、ランの花束を真純に差し出した。
「真純さん、これ」
ま、真純さん? 馴れ馴れしいな!
「わあ、キレイなお花! でもどうして?」
「お怪我をなされたそうで。僕からのお見舞いです。真純さんのイメージに合わせたんですけど、気に入っていただけましたか?」
キ、キザ……山内って、こんな奴だったのか!
「うん、とっても! 私ね、バラとラン、とっても好きなの! ありがとう、うれしいわ」
山内に続いて、藤木が焦り気味に、小洒落た店で買ったらしきケーキを出した。
「こ、これは僕と、一応、相田からです」
なんだ、こいつら。真純にのぼせてんのか?
「まあ、ありがとう! ここのケーキ、おいしんだよね。みんなで食べようよ。お茶、淹れるね」
「僕がやりましょう。真純さんはケガ人なんですから、座っててください」
山内……お前、マジで真純を狙ってんじゃないだろうな……
「コーヒー淹れるの、結構得意なんですよ」
はあ? 事務所だとそんなことやったことねえだろ!
「ほんと? じゃあ、お願いしちゃおっかな」
「おまかせください。所長、コーヒーどこですか」
「ああ? こっちだよ」
「慶太、花瓶あったよね。これ、生けたいの」
「はいはい」
なんだよ……真純と仲良くしようと思ってたのに。
「あの、真純さん」
藤木、お前まで真純さんとか呼ぶな! 減給するぞ!
「ネットとか、つないでおきましたので」
「え? もう? 早いね! ありがとう。私、パソコンは使えるけど、ああいうのがほんとに苦手なの」
「簡単ですよ。今度、お教えします。それと、これ、僕が会計の勉強始めたころに使ってた本です。よければ読んでみてください」
「わ、ありがとう! ネットでね、いろいろ探したんだけど、どれがいいかわかんなくて……慶太の本は難しいし。遠慮なく借りるね」
藤木は明らかに、本を広げる真純の胸元を凝視している。
おい、人の嫁さんを、エロい目で見るんじゃねえよ!
「藤木! 手伝えよ!」
「え? はあ……」
藤木は渋々立ち上がって、ケーキやら皿を運び始めた。
「これ、いい豆ですね」
うん? おお、山内。お前はわかるのか!
「そうなんだよ。これさ、あんまり日本では売ってなくて」
「へえ。店教えてください」
「うーん、あんまり教えたくないんだけどなあ」
「じゃあいいです」
な、なんだよ……つまんねえ奴!
「今度、買ってきてやるよ」
「ありがとうございます」
考えてみると、こんな風にこいつらと仕事以外のこと、話したの……初めてだなあ。
山内なんて、ずっと一緒に仕事してるのに、コーヒーが好きだとか、キザ野郎だとか、全然知らなかった。
「あら、慶太、おかえりなさい」
そう、笑顔で言った真純の後ろには、なぜか山内と藤木が立っていた。
「なんだよ、お前ら!」
「もう、慶太の車、届けにきてくれたんだよ。駐車場の場所、教えてあげたの。さあ、あがって」
いつものタオル地のワンピースにスッピンの真純に、部下二人はにやけ気味で、おじゃまします、と遠慮なく、ずかずかと入っていく。
「わあ、セレブですね! オシャレだなぁ!」
藤木がキョロキョロと見回す。確かに、インテリアのプロだからな、真純は。
山内が、ちらりと藤木と俺を見て、大きなバラとかすみ草と、ランの花束を真純に差し出した。
「真純さん、これ」
ま、真純さん? 馴れ馴れしいな!
「わあ、キレイなお花! でもどうして?」
「お怪我をなされたそうで。僕からのお見舞いです。真純さんのイメージに合わせたんですけど、気に入っていただけましたか?」
キ、キザ……山内って、こんな奴だったのか!
「うん、とっても! 私ね、バラとラン、とっても好きなの! ありがとう、うれしいわ」
山内に続いて、藤木が焦り気味に、小洒落た店で買ったらしきケーキを出した。
「こ、これは僕と、一応、相田からです」
なんだ、こいつら。真純にのぼせてんのか?
「まあ、ありがとう! ここのケーキ、おいしんだよね。みんなで食べようよ。お茶、淹れるね」
「僕がやりましょう。真純さんはケガ人なんですから、座っててください」
山内……お前、マジで真純を狙ってんじゃないだろうな……
「コーヒー淹れるの、結構得意なんですよ」
はあ? 事務所だとそんなことやったことねえだろ!
「ほんと? じゃあ、お願いしちゃおっかな」
「おまかせください。所長、コーヒーどこですか」
「ああ? こっちだよ」
「慶太、花瓶あったよね。これ、生けたいの」
「はいはい」
なんだよ……真純と仲良くしようと思ってたのに。
「あの、真純さん」
藤木、お前まで真純さんとか呼ぶな! 減給するぞ!
「ネットとか、つないでおきましたので」
「え? もう? 早いね! ありがとう。私、パソコンは使えるけど、ああいうのがほんとに苦手なの」
「簡単ですよ。今度、お教えします。それと、これ、僕が会計の勉強始めたころに使ってた本です。よければ読んでみてください」
「わ、ありがとう! ネットでね、いろいろ探したんだけど、どれがいいかわかんなくて……慶太の本は難しいし。遠慮なく借りるね」
藤木は明らかに、本を広げる真純の胸元を凝視している。
おい、人の嫁さんを、エロい目で見るんじゃねえよ!
「藤木! 手伝えよ!」
「え? はあ……」
藤木は渋々立ち上がって、ケーキやら皿を運び始めた。
「これ、いい豆ですね」
うん? おお、山内。お前はわかるのか!
「そうなんだよ。これさ、あんまり日本では売ってなくて」
「へえ。店教えてください」
「うーん、あんまり教えたくないんだけどなあ」
「じゃあいいです」
な、なんだよ……つまんねえ奴!
「今度、買ってきてやるよ」
「ありがとうございます」
考えてみると、こんな風にこいつらと仕事以外のこと、話したの……初めてだなあ。
山内なんて、ずっと一緒に仕事してるのに、コーヒーが好きだとか、キザ野郎だとか、全然知らなかった。